くつのはなし

 あるスタイリストが、雑誌で靴の話をしていた。ルブタンの黒いパンプスについて。それはつま先の部分が浅くて、とても綺麗な形をしているのだそうだ。まあその綺麗さゆえに、長時間の歩行には適さない、つまり足には負担の大きい靴ではあるらしいのだけれど。
でも、そういう靴があってもいいのじゃないか、とても大切な、ほんのわずかな時間のためだけに我慢をして履く靴があっても。彼女はそういう風なことを言っていた。

 飾らない私を見てほしい、なんて言葉は、飾らなくても華やかな人だけが言えるもの。とても見栄っ張りの私は、少しでも自分を綺麗に見せたいから、一生懸命自分を飾りたてる。ピチカート風に言えば「やせっぽちではないが美人でもない」、だから少しでも綺麗な自分を見せたくて、わずかな時間のためだけに、綺麗な可愛らしい靴を履く。マメが出来ても靴擦れが出来ても、ただの自己満足だと言われてもいい。その時さえ自分がよく見てもらえるならば。
 愛すべき装飾心を胸に最大限の努力を。

BGM / LOVESTATION[Teardrops(footsteps on the dancefloor)]