WILDWORLDとTHISHEATとテクノとわたし(mixi日記)

その昔、大阪はアメ村の中心にガレッジという、小さな店がひしめき合う区画があった。そこは古着屋、カフェ、帽子屋そして古本屋と、まるで統一性のない店舗が隣り合う、まるでアジアの下町のような、良い意味での無法地帯。
その内のひとつがWILDWORLD。私がTHISHEATと出会うきっかけになったお店。そこでは、どこから仕入れてきたかさっぱりわからないプログレTシャツと、当時はまだ珍しかったテクノアーティストのTシャツが、店いっぱいに飾られていた。当時の電気GROOVEの瀧氏や卓球氏が着ていたのとまったく同じものが関西にあるなんて信じられない!という驚きとともに足を踏み入れたのが運のツキ。ロックTシャツに混じって、THE ORBORBITAL、「FEED YOUR HEAD(レイブパーティのオフィシャルT)」が堂々と自己主張しているさまは、マイノリティだったテクノトライブには痛快なものだった。さらに私は、「テクノ好きかつ女子」というマイノリティオブマイノリティ。男子向けL~XL展開が当たり前だったテクノ系Tシャツ界で、いち早くキッズサイズを仕入れてくれたWILD WORLDには、お世話になりっぱなしだった。男子に負けないくらい女子がカッコ良くなるための強い味方、とでもいうか。

 私はそこに、滋賀から月3で通っていた。もう単にTシャツを買う店ではなくて、さまざまな音楽や情報を探す場にもなっていたから。テクノの人、と思っていた店長さんは、元々はプログレやNW、アヴァンギャルドノイズまで、大阪アンダーグラウンドを地でいくようなジャンルの人だったそうだ。だから、店ではよく、UNDERWORLDTHE ORBの間にMINISTRYやKMFDM、なんて、テクノとインダストリアル物が混ざってかかっていた。そういえば、サイケアウツを聴いたのも、その店長さんからテープをもらったのが最初だった。
 とまあ、そんな風にある種偏った(笑)BGMのシャッフルの中で、私ははじめてTHISHEATを聴いた。私はそれまで、いわゆるロックマガジンや初期FOOL'S MATEやMIXに載るような音とは、まったく接点がなかった。だって、PWLとMTVで育ってきたところに、ギターポップとテクノで自我をようよう確立した、てくらいの頃だったんだもの。だから、ただひたすらびっくりして、そして怖いと思った。妙におどろおどろしくて怖く聞こえた。ビジュアルも声質もメロディも、とにかく見聞きするもののすべてが。まあ、SPKなんて精神病者とその介護者によるバンドだったんだから、今から考えれば、おどろおどろしく聴こえたとしても普通なんだけど。
 なんにせよ、快・不快を別にして、知らない音を聴くのは純粋に面白いことではあった。だから、店長さんから本当によくCDを借りたし、いろんな音を聴かせてもらった。そういう中でどうしても忘れられなかったのが、THISHEATの「DECEIT」。あの、1曲目の「Sleep」が耳について離れなかった。ダビングをしスリーブをコピーして、ひとりで何度も何度も聴いたもの。
 それからずっと、あのCDは手元にある。何度も聞く。もう再結成はなくなっても、チャールズがソロでやっている物は気になるし、「T」の項と「H」の項はレコ屋でチェックする。

 好きだ好きだと言ってはきたけれど、他にはそんな人なんかいないんだろうなあ、と思って今まで来た。mixiのTHISHEATコミュだって、まあ、そういう好きな人もいますよ、ってくらいの気持ちで作ったものだった。だから、この想いを分かち合ってくれる人がいるのはとても嬉しい。