10月8日(日) sonarsound tokyo 2006 at 恵比寿ガーデンプレイス

 
 待ちに待ったsonarsound tokyo 2006に行ってきた。行く前はもう本当に気もそぞろで、どうしてこんなにワクワクするのか自分でもわからなかったんだけど。今落ち着いて考えると、とにかくBOOM BOOM SATELLITESがちゃんとしたダンスのイベントで見られること、大好きなALTERN8も一緒に、しかもこの2バンドが続きで見られるからなんだと思った。私にしたら当たり前のことだった。

 12時前にガーデンホールに入ったらユキヒロさんのライブだった。ラストに「CUE」という曲をやっていて、お客さんもすごいし盛り上がりも穏やかながらすごい。というかこういうノリが東京版sonarのイメージだよなあ、と思うし、どちらかと言えばこの2日目のラインナップがちょっと不思議だったのかもしれない。このバンドはよく曲とかは知らなかったけど、BBS直前の変なアドレナリンと相まってすごく気持ちよくて、気付いたら身体がゆらゆら揺れていた。
 で、ようやくBOOM BOOM SATELLITES。もうなんていうか、私はこのバンドがすっごく好きなんだと思った。友人の日記に「隙がない」って書いてあって、ああ本当にそうだよなあ、とも思った。確かに彼らの音には、隙というかユーモア的なものは一つもなくて、格好良さで武装されている感じだった(もしかしたら彼らなりのユーモアはあったのかもしれないけど)。音楽好きな人は、今の傾向からするとどこかにちょっとしたヌケ感、ユーモアや緩さがあるのを好むと思う。実際その方が柔軟性が感じられるし、一般的に親しみやすいのも当たり前。玄人好みするところもあるだろうに、BBSは本当に、笑ってしまうほど生真面目だった。
 そういう真面目さはアルバムが出る度によく言われているけれど、多分ライブではあんまり言われないことだと思う。彼らはいわゆる“緩さ”の代名詞である「ダンス」としての音楽を取り扱う祭典(もちろんそれだけではないけど、この日のメインフロアの傾向として)なのに、ガッチガチの真面目さでもって「SONARSOUND EXCLUSIVE SET」というダンスセットをやっていた。私はこれを見て、真面目に笑いをやると面白さに転化される、ということに近いと思った。なんでも本気でやっているものは面白いしかっこいい。音のように形にならない表現は受け手が感覚で得る物だから、やっている方の意気込みや意識、形にならない部分もはっきりと伝わるものだと思う。

 今私の手元にはルイ・ヴィトンを日本で立ち上げた人の本があるのだけど、彼はそこで、ブランドで一番大切なことは心だと言っていた。ブランドが売るのは商品ではなく感動で、それを伝えるのは販売員の心。それを遡っていくと、ブランドが成功するために最も大切な要素は、最終的に心に行き着く、と。ジャンルも形も違うけれど、突き詰めればこういうことなんじゃないかと思う。彼らはBOOM BOOM SATELLITESというブランドそのものであり、音や歌を形作るデザイナー、そこにどう心を込めればいいか考えるマーケッターや営業、お客さんに直接感動を伝える販売員の立場でもある。そう考えると、一つ一つの過程で真面目に考えてきた結果が、このステージにはにじみ出ていたんじゃないかと。

 最初に「SONARSOUND EXCLUSIVE SET」をやるという話を聞いた時、ROVOを筆頭に増えてきた人力ブレイクビーツ系のダンス物になるのかなあ、なんてうっすら考えていた。でも、この人たちは天の邪鬼なのか既にやったことはやりたくないのか単に面白いことがしたいのかよくわからないけど、彼らの通常セットの中ではダンス系筆頭と思われた「Fogbound」をやらなかった。しかもいつもとあまり変わらないセットを原型を留めたアレンジで勝負してきたから、それには本当にびっくりした。人力系でもなければ打ち込みだけにも偏らない流れ。でも今までに聞いたことがないような、彼らならではと言うべき独特なバランス感のダンスミュージックが形作られていた。縦ノリばかりの人たちに、繊細なリズムを刻む楽しさを教えるような何かがあった気もする。いつもより曲のブレイクや後半にリズムトラックのパートがしっかり取ってあったからだと思うけど、歌が入っている時は鬱陶しいほどの縦ノリが次第に細かいさざ波のように落ち着いていく(でもみんなちゃんとリズムをとって踊っている)光景を感じるのはなかなか面白かった。もちろん、ダイブやモッシュも起こっていた(sonarなのに!)から、ライブアクトとしての派手さもあって、多分ものすごく見栄えのするものだったろうと思う。

 スタートとラストでドローンのように敷いてあった「Dub Me Crazy」のフレーズ。それを聴いた途端に嬉しくて仕方がなかった。彼らは最近のアレンジで、初期の曲のパーツを新しい曲に重ねるということをよくしているのだけれど(「Your Reality Is A Fantasy, But Your Fantasy Is Killing Me」も今はCHUCK Dのフレーズだけを使っていたりする)、これもそう。昔々、10年ほど前に彼らがとれまのコンピレーションに収録された時の、いわゆる彼らがダンスミュージックとして出発した頃の音。そのフレーズを今ここに持ってきたのは、そのスタートがダンスミュージックにあると言っているかのようで、思わず心の中でバンザイをした。歌っていてもロックバンド風でもきっちりとダンスができるBOOM BOOM SATELLITES。私はこういうのが聴きたかった。感想を一言で表すと「かっこいい!」に集約されてしまうのが悔しいけれども、そんな素敵な時間を作り出す彼らが見られて、その場にいられて本当によかったと思った。

「SONARSOUND EXCLUSIVE SET」
Moment I Count
Generator
Dig the new bleed
Kick It Out
Dress Like An Angel
(BBSコミュから)

 40分一本勝負という感じのライブがあっという間に終了して、ALTERN8待ち。‥‥最前列にいたら周りが身内ばかりだったので笑ってしまった。しかもセッティング中にDJ機材をチェックしにきたのに、また戻っていくALTERN8(普通のおっさん)にその辺一同で大爆笑。わざわざ衣装着替えに行ったんだよジャパニーズファンのために(イギリスではもうあの恰好はしていないらしいから)。ホントいい人たちだ‥‥。白の防塵服(日の丸付)&ラッカー塗りたての防塵マスクで再び登場したALTERN8! うわああああぁぁぁぁぁあああぁぁ(涙)! オルタネイト! オルタネイト! 本物(白目)! しかも1曲目がRHYTHM IS RHYTHM「Strings Of Life」だった!!!!!!その後もORBITAL「Chime」〜NEW ORDER「Blue Monday」〜JOEY BELTRAM「Energy Flash」〜LFOLFO」って! 途中ではもう防塵服脱ぐわ(片方EROL ARCANのTシャツだった)「一番」の日の丸ハチマキを二人でするわ、「L!F!O!」で煽るわ普通に面白いDJ2人組と化していて爆笑しっぱなし。この人たちこんなにフレンドリーだったか(笑)? でも曲はこの辺から「Evapor 8」「Activ 8」「Frequency」とALTERN8クラシックが続いて叫びっぱなし。しかも後半でスクリーンに写ったレコードバッグにTHE PRODIGY「Charly」が見えて大喜び! 「チャーリー! チャーリーーー!」と叫ぶ。さらにRABBIT CITY「Beyond Control」にEDGE01、2 BAD MICEだって! BIZZAARE INC.、OUTLANDER「Vamp」もかかってなかったっけ? この辺が2006年になってこんなでっかいイベントで聴けるなんて! 今やYO*Cでもかけないわ(笑)ってことで全員で大暴れ。
 メンバーがステージから降りてきたり、ラストの「ワンモア!」って声に答えてもう一枚とかけてくれたりとサービスも満点。でもラストは分刻みで進んでいるイベントらしく途中で終了。DJもスクラッチもあんまりうまくなかったしライブでもなかったけど(苦笑)とにかくすごかった〜嬉しかったな〜。まるでオールドスクールレイヴのコンピCDを聴いているみたいだったけど、やっぱり本人がかける「Evapor 8」「Activ 8」はありがたみが違うもので(涙)。

 そしてセニョール・ココナッツ。ロビーでうろうろしていたら、スクリーンに映ったライブの光景がとっても格好良かったので、急いで友人とフロアに移動。それほど意気込んでいなかっただけに(笑)、純粋に気持ちよく楽しむことができた。アレンジは2年ほど前にドイツ年イベントで見た時と同じかと思いきや、ずっとずっとアグレッシヴな感じになっていて驚いた。アトム・ハートを筆頭に、みんなあんなにきっちりスーツにネクタイを着込んでいるのにアッパー! マンボでサンバで相変わらずムード歌謡のようなコブシの効いたヴォーカル(ものすっごく上手)も入っているのにアッパー! 途中で細野さんが出てきて「Madmen」を歌ったり、幸宏さんが「Limbo」を歌いに来たりと何気なくセニョール・ココナッツ meets YMOが成立していた。管楽器隊も格好良かったけど、とにかくこのバンドはマリンバとか木琴なんかの打楽器系がすごくいい。あんなに激しく打ち込むアクロバティックなマリンバ奏者ってあまり日本では見ないだけに。途中で一瞬だけアトム・ハートがアトム・ハートの過去ソロ風の打ち込みトラックを一人でやっていた。でもそれ以外はだいたい3枚のアルバムに沿った感じでピックアップされていて、中盤では「Europa Express」とか「Autobahn」あたりのKRAFTWERKシリーズ、後半になると80'sMTV系ものが演奏されていた。どれもカバーも原曲も知っているだけに楽しかった。しかしおっちゃんメインのバンドなのに、終始ステージからコールアンドレスポンスを投げかけたり煽りまくったりして感心してしまった。とにかくCDとは全然違うパワフルでアッパーなステージで楽しかった。

 割と楽しみにしていたDJ HELLはスタートがゆるめ、中盤は4時にしてはハードな気がしたのでほとんど聴かずに断念。チェックしに行ったGO HOME PRODUCTIONは、ネタ一発勝負って感じで割に大味なDJだったのと、メインフロアと違いすぎる音圧で胸が痛くなってきたので、数曲踊って雰囲気だけつかんで出た。CDJで自分の曲かける感じなんだね‥‥でも使っているのがFATBOY SLIMの「Everybody Loves 303」のマッシュアップだったりしたから、ロック系のイベントだとすごく盛り上がりそう。とりあえずネタの楽しさで勝負している人なんだと思った。あとステージ上で彼女が楽しみすぎ(笑)。それはそれでなんだか微笑ましかった。

 1日でここまで楽しんだのはひさしぶりで嬉しかった。参加したみなさんおつかれさまでした。