いい雰囲気

古本屋でぼんやりマンガ棚を眺めていたら、渡辺ペコの『東京膜』があったので買ってみる。
この人三鷹に住んでるんやな、って感じの描写がたくさん出てきていた。一番好きな短編の主人公が「たかね」*1で働いていたり、その弟が吉祥寺スターパインズでライブをするシーンがあったり。主人公は女の子だけどエレクトロニカを作っていて弟はラッパー、兄は弁護士だけど実はゲイとか設定はわりと今風。でも書いてあることはなんでもない日常で、兄弟が仲がいいのがいいんだよなあこのお話。成人してもそれなりに仲が良くて、そのことを両親に誇りだとつぶやく場面がとてもいい。他愛のないことだけど、実はあまり描かれることがない題材だから心に残っている。
どの作品にも一人暮らしをしている女子ならわかる気持ちがたくさん描かれていた。魚喃キリコ瀧波ユカリとはまた違ったリアルさ(32平米のマンションが自分の住んでいる間取りに割と似ていたから気になって仕方なかった・笑)。 あとは出てくる男の子の顔や髪型、手が私の好きな雰囲気に書かれていたから余計によく感じたんだろうと思った。


どんな人なのかと思って、ちょうど『spoon.』に載っていたインタビューを読んだ。20代の燻っていて一人焦っている気持ち、私にもそっくりそのままあったことだから「ああー」と思った。だから作品にもシンパシーが感じられるんかな、とか。20代の頃は遊びの面では毎日楽しくてこういう時間を過ごせて本当によかったと思っているけれど、仕事の面ではいつも不安定でやりたいことがやりたいのにちっとも出来なくて焦るばかりで紆余曲折していたからなあ。

東京膜 (クイーンズコミックス)

東京膜 (クイーンズコミックス)

*1:三鷹の有名な甘いもの屋さん。たい焼きが有名