20代なかばの話。


ラ・ラ・ラ・ヒューマンステップスのチケットが来た。
20代半ばの頃に聞いた、一回り歳の違う知人の「せっかくダンスを見に行くならS席でちゃんと見たい」という言葉は、今になってやっとそれを実行できる体にはなったと思うし、意味もわかる気がする。
昔はお金がないのに(だからと言って今すごいお金があるわけでもない)見たい公演や展覧会やライブが山のようにあって、遊びに行きたいパーティも毎週あって、欲しい雑誌はすぐ出るし、欲しい美術系書籍は1万円とか普通だったし、アナログは高くなるばかりの上にサイクルは早いし、もちろんCDも欲しいし、で当然のことながら全然足りなかった。となるとどこかで削っていかないといけないわけで、チケット単価の高いダンス系は「見られるだけでいい」レベルの席で我慢するという選択になることが多かった*1。また実家がびわ湖ホールに「行きたいものには全部行こう」と思えてしまう近さだったから余計に。
そんな頃に偶然、ドイツでベルリンフィルを見る機会があった。大人はみんなソワレでシャンパンを呑んでいるけどくたっとした格好の学生もいる。こんなにチケットが高そうな公演に普段から入れるなんてドイツの学生はすごいなと思っていたら、実は学生用に安くで見られるチケットがあって、彼らはそれを目当てに来ているのだと聞いた。正面と反対側やすごく遠くで見づらい場所なんだけど、でもみんな「見られるだけでいい」って感じで楽しそうだった。なんだか妙に親近感が沸いて嬉しくなったのは、どこでもそういうことを考える子たちがいるんだとわかったからかもしれない。今では日本でも学生用チケットの括りができてきていいことだと思う。
先の知人と一緒に見たいと自分なりに奮発してS席で見た時のこともまた、別のいい思い出になっている。遠くで見るのとは全然違って迫ってくる感動も大きいことがわかったから。自分がいい席のチケットをちゃんと買えてるなあと思った時に、こういう思い出とかのいろいろを考えることは多い。
ラ・ラ・ラ・ヒューマン・ステップス『Amjad アムジャッド』
http://www.saf.or.jp/p_calendar/geijyutu/2008/d0704.html

*1:そしてS席の人は見やすくていいなあとよく思っていた