陳腐化する

青山でカシミアのサマーカーディガンを試着させてもらった。海外ニットブランドだけあって着た感じも織りもとてもよくて、何の気なしに「上質な感じがしますね」と言った。そしたら店員さんが「そうですね、上質ですね」と含み笑いをしている感じで答えていた。その後で何度か「上質」って言葉をくり返していたから、たぶん彼女は最近よく使われる雑誌のコピーを思い出して、それで笑えてきたんだろうなと思った。
だからどうだって訳でもないし、別に気を悪くしたとかではなくて。ただなんというか、彼女の反応は「上質」という言葉の陳腐化を表しているんだろうなとか、でも上質は上質だしなとか、じゃあその陳腐化された言葉を使わずに思いを正しく表現するにはなんて言葉がいいのかなとか、そうか上等でもいいのかとか。そういうことを、外でざんざん雨が降る音を聞きながらショップの中でしばし考えた、という話。