9月28日(日)コントイベント「六人の侍」@ルミネ the よしもと

※1 記憶による書き起こしなので異なっている部分、失念部分があります。
※2 敬称略
※3 来年の大阪公演、ラストの東京公演を経てDVDになるようなので、ネタバレしたくない人は見ない方がいいです(詳しい内容部分は畳みます)。
出演:河本準一次長課長)、小出水直樹シャンプーハット)、山里亮太南海キャンディーズ)、諸岡立身岩尾望フットボールアワー)、後藤輝基フットボールアワー

掟其の壱:作家本人は自分の書いた作品には出られない
掟其の弐:自分以外の5人は自由に使ってよい
掟其の三:(失念)

1999年、心斎橋筋二丁目劇場のラストイベント(閉館前日)となった「六人の侍」を、約10年経った今年再演。現超新塾メンバーの代わりに南キャン山里を迎えすべて新ネタで行ったという。本来はもう少し小出水の出番があったが、骨折のため(本当に松葉杖をついていた&お詫びが冒頭であった)配役や出演量にはかなりの変更があったらしい。
1)河本準一作「エイプリルフール」
死んでしまった中学生男子(小出水)のお通夜での、男子の母親(山里)と焼香に訪れた担任(後藤)&生徒会長(諸岡)のやり取り。何かというと男子の「首の横をばーんっと叩いて」いた彼らは、焼香の段になり「彼が好きだった曲に合わせてお焼香をさせてください」とラジカセから音楽を鳴らす。流れてきたのは木村由姫「LOVE&JOY」で、それをBGMにパラパラ風焼香をする。それにキレた母親は「あんたらが息子を苛めてたのはよくわかった! 死んだっていうのは嘘、今日はエイプリルフールや!」と本人を呼んで彼らを問い詰める。
●言葉の言い回しやラストのどんでん返し、そもそも「死」ネタを持ってくる辺りがすごく河本らしい。ちなみに木村由姫「LOVE&JOY」はこれ。
Yuki Kimura - Love and Joy (PV) http://jp.youtube.com/watch?v=Sg9YUcRlvUQ

2)岩尾望作「取り調べ(タイトル失念)」
SMクラブの一室にあるらしい殺人現場。ヒールが頭に刺さって死んでいる男(小出水)の横で、わんわんと泣きながら刑事(諸岡)の事情徴収を受けるボンデージ&ぱっつんロングの女王様(河本)。このヒールで踏むことになった理由は自分か相手の意向かと確認する件で「ハイヒールには慣れてないんです普段はスニーカーかバッシュなので‥‥」と連呼する。他の部屋でプレイ中の犬やバイクになっている客(山里)と白ハイヒール履きの女王様(後藤)が現れたり、つじつまの合わない言い訳をしたりするが‥‥。
●スニーカーにこだわる件とSMクラブの設定、執拗に同じフレーズをくり返すのがフットの漫才ネタに近いというか岩尾らしい。

3)小出水直樹作「ソルジャー」
戦地で、兄弟のように育った歳の違う幼なじみ(諸岡&岩尾)が歩いている。「もう歩けない俺のことは捨てていけ」という兄貴分(諸岡)。弟分(岩尾)が「何を言うてるんや絶対一緒に帰る、兄ちゃんは僕の後ろに隠れて休め」と言うと、兄役は突然弟役のお尻に顔をくっつける。「女もいない花も咲かない戦地で唯一の花は尻の菊だ!」と言いながら。その後なぜか戦地で出会った「オニヤンマを追っかけてたら道に迷った」という弟分の母親(おかっぱヅラ&もんぺの河本)とのやり取りを経て、最後は大砲に見つかって吹っ飛ばされる。すわ一大事と思いきや‥‥。
●いい話かと思いきや、エロネタ突拍子もない設定がガンガン入ってくるのは小出水ならでは。真面目なところからだんだんおかしくなっていく流れはシャンプーの漫才に近い。

4)諸岡立身作「ワスレモノ返却所(?)」
遺失物返却所の待合室で書類に何かを書き込んでいる3人。言動が気持ち悪い女(小出水)と携帯を忘れたという普通の男(山里)、「何を忘れたか忘れた」というやくざ風の男(岩尾)。黒いアームカバーにメガネの職員(後藤)が現れて、「見つかりましたよ、あなたが忘れた人との接し方」と言い緑のバルーンを女にわたすと、それまで得体の知れない言葉をつぶやいていた女が突然真面目でしとやかな女性の言動に変わる。普通の男が驚き、これはどういうことなのかと聞くと、「あれは彼女が忘れてしまった人との接し方だったんですよ」と事も無げに答える。そして、忘れ物には「初めて感じた感動」「その節のお世話」など形のない物も多く、最近ではそれをわざと忘れる人が多くなっているのだと言う。普通の男が感心していると、歩き方や洋服の着方もろもろ「初心を忘れた」男(河本)が現れ、職員といくつかのやり取りをし始める。その光景を見て「初心忘れるとめんどくせえな」という普通の男は、携帯を見つけてもらうも電話の向こうの嫁を叱りつけながらその場を後にする。
再度同じ場に現れた普通の男は「嫁への感謝の心は届いていないか」と聞くが「それはあなたの気の持ちようだ」とあしらわれる。
●今は演劇の脚本などを書いている諸岡らしい演劇寄りかつ意味のあるストーリー。

4)山里亮太作「旅立ち」
ハローワークに来た33歳ニート(岩尾)とハローワークの職員(諸岡)。「海賊王になりたい。王じゃなければ海賊でもいい」と言い張るニートを職員は大人の対応で何度もたしなめるが、「麦わらを目印に待ち合わせをしたけど夢は見られなかった、やっぱり無料の出会い系サイトではあかんわ」と突然話し出したり、聞き分けなく「ゴムゴムの木!」とパンチをしてきてあんまりにしつこいのでブチぎれる。その後ビビらされたニートは「海賊王は忘れてください」という言葉に従いおとなしく仕事の条件を一つずつ伝えていくが、結局は探せずに帰らされる。そして次の順番の就職希望者をが現れたので見るとそこには‥‥。
●山里ならではのニートの描写に感心した。細かすぎて最高。

5)後藤輝基作「ミミちゃん」
間に挟まれる絵日記風手描きイラスト&主人公の語りで時系列を説明しつつ進むコント。お父さん(山里)にうさぎ(着ぐるみ)を買ってもらった、おかっぱ半ズボン白ハイソックスの小3男子(河本)。「ミミちゃん」と名付けたうさぎはとってもかわいくて、日を追うごとにどんどん大きくなっていく。大きくなりすぎてお父さんに「外に連れて行くな」と言われたり、いつの間にか手が五本指になってなめ茸の瓶の蓋を開けられるようになったり、大きな頭が取れで細い顔になったりしているうちに、突然ミミちゃんは口から糸を吹き出して繭になってしまった。繭を破って生まれれると、人間のおじいさん(岩尾)そっくりの恰好になった。「ミミさん」と対応に困る家族をよそに男の子は変わらず仲よくしていた。しかしある日お父さんは、会社の都合で転勤し社宅に住まなければならない、そこではペット禁止なんだごめんな、と告げる。泣いて嫌がるがミミちゃんはその状況を悟り、男の子を勇気づけた後でそっと家を出て行ってしまった。月日は流れ「でもいつか会うことができる、そう思っていればサンタさんが会わせてくれる」と思い続ける男の子は、ある日ミミちゃんそっくりなホームレスに出会う。「でもミミちゃんはあんなんじゃない」と言いすれ違っていく。しかしホームレスが後ろを向くと、そのお尻にはうさぎの尻尾があった。
●絵日記に使われたかわいらしいクレヨン描きのイラストは後藤本人の作らしい(ED VTRでの写真に写っていた)。丁寧な展開と切ない終わり方でなかなかロマンチックな話。

それぞれの個性が出ているのはもちろんのこと、何より山ちゃんのポテンシャルの高さを改めて感じたイベントだった。13・14期メインのメンバーにあって若手から唯一選ばれたのもわかるという感じ。唯一コンビで出ていたフットは、後藤も元ボケだけに両方がネタを書けるからこそ今のあの完成度の高い漫才ができるんだろうと思った。

 * *

ポスターとVTR、イベントのデザイン全般が異様に凝っていてすばらしい。OPはメインビジュアルにもなった「椿三十郎」風時代劇メイクを施した 6人の映像。「なんであんなんにする必要があったんかさっぱりわからん、俺ら死んでるみたいな扱いやもんな」というツッコミのあったEDは、各自の小さい頃の写真と稽古中の写真に小田和正の曲で富士フイルムのCM風。コント間はバイオリン&ギターの生演奏と楽屋で着替えたり打ち合わせをする映像が映し出される。途中で河本が着替え中にシャワーを浴びる真似をしたり後藤がSMの衣装をストリップ風にふざけて脱いでみたり(白いハイヒールが似合いすぎ。きれいな筋足・笑)、音楽に合わせて岩尾がぎこちなく踊ってみたりと、幕間も飽きることがない(むしろ映るのが楽しみになる)。とても丁寧な作りの上に当然のことながら面白く、ビジュアルやデザインも前に見たフットの「ドレキグラム」くらい丁寧であっという間の2時間だった。