甘く、柔らかい
お友達と娘ちゃんの日々を綴っただんなさんの文章が好きでよく見ている。その文はいちいち洒落がきいていて、遠からず近からずの同業だから納得はしているものの、それでもやっぱり思わずモニタの前で地団駄を踏んでしまう。社会的なことを書いても悶えるほどすてきな文章になるこういう人こそ文系男子なんじゃなかろうか。などと、地団駄を踏みながらいつも思うのだけれど、私が好きなその内容は基本的に「父親」としての目線で書かれたものなので、そういう意味ではもはや男子ではない。でも、「男子」という呼称を使いたくなるのはやはり、レインコーツやパステルズというあるトライブに属する女子であれば反応せずにいられない単語使い、そしてミスタードーナツ関西的に略すとミスドにレディボーデンなどという個人的に思い入れの強い固有名詞が組み合わせられているからだった。
でもよく考えたら今言った理由の半分くらいはまったくもってどうでもよい。
男の人が書く文章で思い出したけれど、新宿の紀伊國屋で『現代思想 総特集=ドストエフスキー』号に合わせたらしい亀山郁夫先生セレクトのブックフェアが開かれていた。ロシアアヴァンギャルドを少しでも学んだ人なら名前を知らない学生はいないだろう先生は、昔すごく習いたい憧れの先生だった。まあそんな先生のフェアがあるというだけでも…というところなのに、13,000字もある解説リーフレットまでもらえたので嬉しくて鼻血が出そうになり、東京はすごいと何度かこころの中で唱えたりした。
というところで再び先の文章の話に戻る。何が言いたかったかというと、リーフレットに書かれた亀山先生の文章は「いったい」や「いま」、「たんに」というある種の語句が意図的に開かれていて、だからこそのどことなく柔らかい感じがあるということ。それと同種のものが先の文系男子(「元・」とは言わない)の文章にもあるということ。そしてそれが、私の好きになるトーンが持つ理由のひとつなのではないかと考えた、という話。
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