8月12日(金)SONIC MANIA@幕張メッセ

 PRIMAL SCREAM/scream-a-delicaがリリースされた1991年は、UKでThe KLF/Whiteroomが発売され、日本ではThe Flipper's Guitar/ヘッド博士の世界塔が発売された年だった。

PRIMAL SCREAM/Come Together http://bit.ly/oHe6Rt

 高校1年だった私は海外アーティストのライブに行くという考えなども頭になく、気付けばリリースに併せてあったはずの来日を逃しその後プライマル側によるあれこれの理由で「Come Together」だけがリアルで聴けることなく20年の月日が経ってしまっていた。
 こんな話など懐古厨以外の何物でもないのかもしれないと思う。でも私の心には、この「Come Together」とThe KLF/Justified and ancientとThe Flipper's Guitar/Groove Tube Pt.2が本当に特別な曲として存在しているから仕方がない。
The KLF/Justified and ancient

The Flipper's Guitar/Groove Tube Pt.2

 もしこの曲たちと出会わなければ、今の仕事をしようとは思わなかったし東京にもいない。たぶん関西で穏やかな日常を過ごす母親になっていた…というのはまあ一つの例えですなわち今とまったく違う人生を歩んでいた、そう言い切れる位には影響を受けた。だから、その中の1曲(それ以外はもう聴けない)をボビー自身の歌声で聴ける、と思ったら嬉しくて仕方なかったのだ。
 22時半からのプライマルは「scream-a-delica live」のタイトル通り。事前にわかっていたしBBCの映像を見てもいたけど、実際に見ると嬉しすぎてやっぱり自然に叫んでしまった…。「Don't Fight It, Feel It」を歌うデニス・ジョンソンが歌声は変わらずすばらしかったし、懐かしいPVがスクリーンに映し出された「loaded」にマラカスを振るボビーの姿が重なる感じもすばらしかった。そして「Come Together」。この耳で実際に聞いた時に、本当に嬉しいと思った。よかった。かっこよかった。ただでも、そういう気持ちだけでなくなんだかいろんなことが思い浮かんだ。ボビーは当時のことを完全に昇華できたんだなとか、もう20年が経ったんだなとか、これが区切りなのかなとか。嬉しい感じと妙に切ない感じが一緒くたになって変な感じがした。
 その後は「Country Girl」や「rocks」のようにライブでおなじみの代表作。この辺の曲にはあまり思い入れがない私だけど、90年代後半にクラブで死ぬほど聴いた、そして大好きだった「Jailbird」はちゃんと聴けたのが嬉しかった。

 その一つ前。トップのブンブンサテライツは「アーティストの都合で」という但し書き付きでスタートが30分早まっていたが、実はこれが本当にありがたかった。ブンブンにとっても「scream-a-delica」はとても大事なアルバムだったはず。だからこそ、プライマルに敬意を表する意味でTT*1にこっそりと異議を隠してずらしてくれたんじゃないのかな…と私は思っている。そうじゃなかったとしてもまあそれはそれでいい。
 うっかり中途半端な前方にいてしまい、1曲目でモッシュに巻き込まれたのでとりあえず後ろに下がってマイペースで楽しむことにした。「EasyAction」や「Moment I Count Down」、「Rise and Fall」などの昨今の定番であるナンバーをきっちり煽りながら進めていくのを聴くと、やっぱり彼らはライブが一番すてきだと思う。いつの間にかモッシュ待機曲みたいになっていた「Kick It Out」も、ステージ上の華やかさを見ればそれはそれで。ライブ自体を見るのはひさしぶりで、本当にすごいバンドになったなあ…としみじみした。正直プライマルまでの時間がぎりぎりで最後までいられなかったけれど、大好きな「dig the new breed」が聴けたのでもう満足。初期からCDには収録されず今もライブ盤でしか聴けない曲だけど、「scattarin' monkey」や「fogbound」をあまり聴けなくなってしまった今、ブンブンで一番好きな曲なので…。アレンジが変わっていくのでおなじみの曲だったけど、また全然違う曲になっていた。

 プライマルが終わった後は、FAC51 THE HACIENDA StageのDJブースで808stateを見る。昨今の来日では普通になったMCアリのDJセット。人こそ少なかったけれど、ロックイベントの中で聴く往年のクラブライクなテクノDJは、やっぱりどことなく懐かしくてホッとするものだった。懐かしのMory Kanté/yeke yekeやPIZZAMAN/Sex On The Street、最近出たとおぼしきCE CE PENISTON/Finallyのネタトラックもかかる夏っぽくてアッパーな選曲。だけど、結局一番に盛り上がったのはやっぱり「Pacific」だった。やっぱり808となればライブで聴きたいのは皆一緒のようで…こうなると一度はライブセットを見たいとも思う。

 SOUTH CENTRALは2008年にPENDULUMと来日した時(この時もサマソニ前夜祭だった)とほぼ変わらない、むしろニューレイヴの派手さがパワーアップしたライブだった。相変わらずフードをきっちり被って黒尽くめのおしゃれなスタイルだったが、猛暑の日本で倒れやしないかとちょっぴりひやひやとしてしまった。出世作になった「Smells Like a South Central Bootleg」や「The Day I Die」などの代表作をぶち込んでいたのも相変わらず。レイヴの突き抜けたアッパーさがとてもバカっぽくてとてもよかった。

 そして待ってましたA-Trak! さすが14歳でDMCのチャンピオン獲っただけあるDJ…DJよりもターンテーブリストと呼ぶ方がしっくりくるテクニック。ただ同じDMCチャンプでも、DJ KENTAROと比べるとこれがまた少し違ってまぎれもなく「DJ」のプレイなのが不思議なのだった。アッパーなトラックの間にピッチダウンしてロービートのヒップホップを入れ込んだり、一つのトラックを延々とスクラッチして空気をあげていったりと自由自在。手元もスクリーンにちゃんと映してくれていたので、彼の華麗な手さばきも見られてすごかった…。ラストの曲がかっこいいかと言われたら小首をかしげるメキシカンカントリー(演歌っぽい)だったのに、節回しが独特なのとスクラッチの効果だったのか、終わった後に周囲の女の子や男の人たちがみな同じフレーズを口ずさんでいたのが印象的だった。
 ちなみに、帰宅後Twitter経由でコメントを送ったらちゃんとリプライを返してくれた律儀な人でもあった。

 ラストはCHASE&STATUSを見た。London Elektricityやroni sizeのようなバンドスタイルのドラムン/アーメンビーツ/ダブステップ。ライブは初めて聴いたけれどやっぱりMCがいるバンドは上がる! さすがBingo Beatsからもリリースしてるだけあって、UKならではの悪そうな音と変拍子ブレイクビーツに煽られて自然と身体が動いてしまう。最後までいられなかったけれど、楽しかったし彼らのライブの雰囲気は満喫できた。
 運営のモタモタ感さえ除けばライブもDJもすてきでよい一夜だった。

*1:運営優先で組んだとしか思えないひどさだった