[文化系]アメリカのブルースミュージカル

内にこもった映画が好きな一方で、人が歌ったり演奏したり踊ったりする映画も好きだ。
私は音楽を媒介にして人が楽しそうにしている光景を見るのが好きだから、これもその一貫なのだと思う。時代は古くても新しくてもいい。ジャンルもなんでもよくて、クラシックでもNWでもジャズでもクラブミュージックでも同じように楽しくなれる。暗いみなみ会館のレイトショーで「STOP MAKING SENSE」や「TRAINSPOTTING」を見た時も、新宿の満員になった映画館で「SWING GIRLS」を見た時も、テレビで流れていた「SOUND OF MUSIC」や「ロシュフォールの恋人たち」を見た時もそう。MVも人がダンスするモチーフだと、なんだかワクワクして心がウキウキしてしまう。

貸してもらっていた「ブルース・ブラザース」を再び鑑賞する。
黒いハットにサングラス、黒いスーツとネクタイの兄弟が、生まれ育った教会を救うべく昔やっていたバンドを再結成しお金を稼ごうとする話。‥‥なのだが、その過程がもう好き放題すぎて笑ってしまう。車がまるでミニカーのように壊れ、ショッピングモールは軒並みなぎ倒され、猟銃から短銃から火炎放射器までぶっ放されまくり(主に敵から)。何十台というパトカーに追い回され、警察から特殊部隊、軍隊にまで囲まれ、それらが連鎖反応でまたぐしゃぐしゃになっていく。でもここで絶対に人が死なないのがいいところ。なんといっても、彼ら自身が崩れた瓦礫や車、電話ボックスの中から何事もなかったように歩き出すのだ。そのあんまりさに、思わず「いやふつう死ぬから! 」とか、「ていうかそれドリフ!? 」と大笑いしながらのツッコみ放題。
本当にアメリカならではの大味な娯楽映画だなあと思う、もちろん良い意味で。

でもそれより面白いのが、話の合間に挟まれるミュージカルやバンド演奏のシーン。兄弟が訪れた教会ではJB扮する牧師が超ファンキーな説教を繰り広げ、街の市ではジョン・リー・フッカーがブルースのライブをやっている。アレサ・フランクリンがバンドに戻ろうとする旦那さんに辞めろと歌い踊れば(あの曲はハウスでカバーもされている気がする)、楽器屋のレイ・チャールズがオルガンの試し弾きをするシーンはライブに早変わり。最後は刑務所での「JAIL HOUSE ROCK」。ちょっと思い出しただけでもずいぶんたくさんある。こういうシーンがとにかく気分がいい。
それから、「自分で買って聴いた覚えがないのに知っている曲」もかなり多くて嬉しい。「わぁ、これ“から騒ぎ”のエンディングだ! 」とか「昔ポンキッキで流れてた! 」とか、知らずに聴いていた曲がいかに多かったか、と思う。

楽しくて、歌と踊りがあって、豪快で、実はいい話。素直に楽しめる作品でよかった。

「ブルース・ブラザース」(Amazon)