女の人の顔

雑誌を読んでいた。
載っているのは年輩の女性ばかりなのだけれども、どの人もとてもふくよかなやさしい表情をしている。人前に出る職業の人ばかり、ということはもちろんあるのだろうけれど。でもなんというか、そういうものからは離れたところにある美しさや余裕が、写真には見える。歳をとった人ならではのやさしい一瞬がとても上手に収められているような気がした。こんな表情ができるなら歳を取るのもいい。

とはいっても、私は昔から歳を取ることがそれほどいやではなかった。若い頃の方がピカピカと光っていただろうし、年齢を経たことで前より困ったことも悲しいこともあるけれど、あの時できなかったことが確実にできるようになっている。少しは経験値が増えているのだろうかと思う。

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お母さんになる人が増えた。
もともと人より歩みの遅い私だから周りもそうだと思っていたのだけれど、彼女たちの時間は確実に過ぎていたのだ。赤ちゃんがね、と話す彼女たちの顔はみな一様に、明らかに今までと違っている。年齢が若くても「お母さんの顔」に見えるのは、おそらく懐の大きな優しさと強さが表情に出るから。優しさと凛々しさが滲む女の人の顔はすばらしい。

今まで私と同じような顔をしていたはずなのにな。
すっかり置いてけぼりをくらっていることに気づいて苦笑をし、私には絶対できない表情をする彼女たちが少し羨ましいと思う。

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「フォービューティフルヒューマンライフ」
人はいつの間にか歳を取る、その日々のために私は何をすればいいのか。そう思った時に必ず思い出すことば。それは一度傾いてしまった化粧品会社のキャッチフレーズであり、私が唱える魔法のことばでもある。いつだったか、そう勝手に決めた。

いろいろな人がいるけれども、みなきっと美しい毎日を過ごしているのだ。私も美しい毎日を過ごせたらいい。そして歳を取って、あんなふうに美しい表情ができたらいいと思う。

(過去に書いたもの)