あつい時期のあまい花

帰り道に山梔子の植え込みがある。幹線道路に面した植え込みは、花も葉も、都会の空気ですっかり痛んでしまっている。痛々しい姿の白い花は、その香りだけが何も変わらずに甘い芳香を放っている。

暑い時期の甘い匂いは、日本がかろうじてアジアの風土であることを教えてくれるような気がする。私は夏が嫌いだけれども、湿気のこもったような重たい空気に絡むように、甘く、濃く、ふわりと漂う山梔子だけは、好きなものと言おう。