乙女行脚(遅ればせながらの更新)
週末は八重椿と桜、辛夷の咲き乱れる道を通り抜け、世田谷文学館の「花森安治と「暮しの手帖」展」へ。ひとつも広告の入らない、いつもおいしそうなお料理の、いまだに分解写真のような色合いの、女性のための「暮しの手帖」。センスがよくてモダンで、でもしっかりと我が道を行く雑誌の展覧会は、もうすぐ終わりということもあってたくさんの人が見にきていた。
ずらりとならんだかつての表紙、花森安治の描いた表紙原画に写真、一文字一文字アキを切りつめてある新聞広告、森茉莉や野上弥栄子、武者小路実篤らの生原稿、安治愛用の品々、お孫さんに送ったお手紙、掲載されていた作品の再制作物など、さまざまなものが並んでいる。完璧主義とも言える厳しい職業人の顔に紛れ、絵入りのかわいらしいお手紙に日常の優しいおじいちゃんとしての顔が覗く。
感心したり感動したり、ただかわいい!と思ったり、ほほえましかったり。こぢんまりとしたものではあったけれども、見るべきもの多い展覧会だった。
竹久夢二の便せんと花森安治のハガキを買った私、夢二の手ぬぐいを3種類買った友人。ふたりともほくほく顔で、気持ちのよい春の道を歩く。
*
ホームになだれ込むように咲くしだれ桜を見ながら、小さな井の頭公園駅で下車。
お目当てのカフェ宵待草は、野ばらちゃんの『カフェー小品集(Amazon.co.jp)』にも載っていたお店だった。古ぼけた壁にかかる薔薇の精密画とテーブルに飾られたラナンキュラス、白熱灯がともるアンティークのランプ。わあ、と言ったままぼんやりしてしまう乙女度の高さ。そして、ひとたび食べ物をお願いすれば、野いちごのリキュールが入ったミルク紅茶、アップルミルクティ、ふわふわのバナナケーキに蜂蜜バターの乗ったトースト、大島弓子のマンガに出てきそうな甘いものたち。こんなお店に来れるなら、いつまでも「乙女留年生」と揶揄されたって構わないわと思う。
*
可愛いものとおいしいご飯と甘いもの、白熱灯の光でぼんやり。このままずうっとこうしていたいねなどと言ったりした。
- 作者: 嶽本野ばら
- 出版社/メーカー: 青山出版社
- 発売日: 2001/07/01
- メディア: 単行本
- クリック: 10回
- この商品を含むブログ (26件) を見る