映画の感想などを女子嗜好のみで書いたりする。

プラダを着た悪魔」@日比谷スカラ座
公開まで長かった‥‥ずっと心待ちにしていた「プラダを着た悪魔」を見た。ファッション界に君臨するトップファッション誌の編集長とアシスタントに応募してきたジャーナリスト志望の女の子を取り巻く話。仏VOGUEの編集長をモデルにしたとおぼしき原作裏話にパトリシア・フィールドのスタイリングへの注目もあって、公開前から映画雑誌だけでなく女子ファッション誌から社会派グラフ誌からカルチャー誌まで巻き込んでただいま大盛り上がり中。
(ネタバレになると思うのでたたみます)


 いーーーーやーーーーおもしろかった!
 冒頭のシーンから各女性の立ち位置や意識がファッションアイテムだけで表現されていたのがすごい。例えば靴一つとってもそう。最新ファッションとピンヒールで決めたエディターたちがタクシーを止める一方で、主人公のアンディは動きやすさ一番のトラッドファッションに太ヒールでガシガシ歩いて地下鉄通勤。ファッションエディターがタクシーを使うのは長距離を歩くための物ではないピンヒールを履いているからだし、アンディが歩きやすそうな太ヒールなのは足でネタを集めるジャーナリスト志望だから(意味転じて「動きやすい」)だろうな。などということをアイテム個々が想起させるわけで、その背景に何が隠れているのかを考えるのがまた面白い。
 そういえばアンディが変身するきっかけになったピンヒール、またJIMMY CHOOだった。この間の「Kinky Boots」といい、JIMMY CHOOは映画好きするブランドなんだろうか。


 流行業界ネタだけあって音楽もかっこいい。やっぱり一番のヒットはアンディがどんどん綺麗に変身していく時に流れたマドンナの「Vogue」。知らなかったので、 「これがこのシーンで流れるか!」 という嬉しさ。この曲自体のPVもヴォーガーのポーズのカットアップ物だったけど、アンディの衣装がどんどん切り替わる様子もカットアップで編集されているのでぴったりだった。今回の原作とのニュース性も抜群だし、よく考えられているものだなあと感心した。その他にもモラレスのカスケイドmixとかブラック・グレープとか流れてて驚いた!
MADONNA/Vogue http://www.youtube.com/watch?v=HF1VMasNXFc


 変身直後の格好(シャネルのジャケット&ツィードのミニスカート&ニーハイブーツ)はかなりのインパクトだった。しかしなんとなくシャネルだろうなーと見ただけでわかる作りになっているシャネルのジャケットはやっぱりすごい。ちなみにこの間まで銀座のシャネルの路面で近いスタイリングで飾ってあった。


 どこにも記述がないけど、後半でナイジェルとの乾杯シーンでアンディが着ているカッティングの綺麗な黒のジャケットって、イヴ・サンローラン・リヴ・ゴーシュのじゃないのかな。シンディ・ローパーもご愛用の憧れジャケット。でももしあれがリヴ・ゴーシュじゃなければ一体どこのなのかが知りたい(上のPV3'44"以降に出てくるジャケットに似ている)。


 パーティシーンでのメリル・ストリープのデコルテの美しさにびっくりした。この映画ではパーティ以外のシーンではどれもそんなに露出度が高くないんだけど、代わりにデコルテ〜胸の美しさを強調するスタイルが多い。さすがパトリシア、女性らしさを上品にアピールするスタイリングだわ。デコルテの強調くらいなら私だって真似できそう(笑)。
 

 ラストのカジュアルファッションもかわいい。カジュアルだけど足元はピンヒールのブーツ、アイテムの素材感も劇的に違っていて上品。やっぱりこういうのを見ると、カジュアルだけど素材が良くて品がよい着こなしはいいなあ、としみじみ思う。


 シニアアシスタントのメアリーやアンディのメイクもとりあえず凝視。下目蓋のインサイドラインは囲むと目が小さく見えるっていうけど、入れた方がやっぱりはっきりすると思った。メアリーのアイメイクが割にHRとかNARS系の発色の良いカラーメイク(ブルー系とか)に対して、アンディはブラウン〜コパー〜カーキベースにまとめてあった。やっぱりアンディのアイメイクが日本人としては真似しやすいと思う。赤系のリップとしっかりと山のあるヘップバーン眉に合わせたら、意外と強いイメージの表情になるみたいだし良さそう。あと街中のシーンに日本から撤退してしまったSEPHORAがちらっと写ってて懐かしかった。
SEPHORA http://www.sephora.com/

 ナイジェル役のスタンリー・トゥッチがファッション業界のゲイらしさ(台詞には出てこないけどそういう設定)をそこはかとなく表現するのがすごく上手だった。メトロセクシャル系にしていくと、どことなくそういう雰囲気が出るのかもね。それから、きっと彼らはスーツのサイズ選びが上手いんだろうな。


 仕事面はそれほど詳細に描かれていなかった(編集という職業の地味な部分はすっとばしてある)けど、これを鵜呑みにするヤツはいないだろうし、ファッション映画だからいいじゃない! エンターテインメントに徹してていいじゃない! キラキラしてたらいいじゃない! て感じ。ただ、人から言われたことだけじゃなくて、その先に発生するであろう望みを予想して先回りすることの手際良さ、その必然性ははっきりと描かれていたと思う。それはまあどんな職業にでも当てはまること。
 でもこの彼氏は器ちょっとちっさくない? 最後の選択(再就職先の話を含めると結果的によかったのかもしれないけど、その過程だけ見た場合)もなんとなく釈然としない感がある。

 でもそれ以外は全編面白くて、ちょっとでもファッションに興味のある女子は見るといいと思った。
 
オフィシャル(海外版):こっちの方がいろいろ見られる。 http://www.devilwearspradamovie.com/
オフィシャル(日本版) :http://movies.foxjapan.com/devilwearsprada/

さて、次はいよいよ「マリー・アントワネット」だね!