'00年代のサブカル芸人

なんとなく記録(以下敬称略)。


中山功太は言葉の端々に「おぉ?」と思うネタが見つかるから、ものすごく面白いサブカル趣味を持っている芸人さんなんじゃないかと踏んでいる。個人的にそういう記事を読んでみたくて、どこかがやればいいのにってずっと思っているけどまだないっぽい(というかそんな仕事があったら私がやりたいわ)。

昨日の無限大でも、ものすごく突発的というか返しにくい独特なボケをしてくるコンビに向かって「ボケがジャズ!」ってツッコミをしていた。多分ジャズのインプロとかアヴァンギャルド物からそのボケのアヴァンギャルドぶりを指して言っていたんだろうけど、ツッコミとしてメタ次元過ぎる(笑)。それ多分意図まったく伝わらないだろうよ、と大笑いしながら思った。と同時に「この人ってやっぱり'00年代サブカル芸人らしい視点だなー」とも思った。
過去の出囃子にm-flo「come again」を選ぶセンスのあたりから「パヴィリオン山椒魚」をナチュラルに推していたり(映画コーナーをやってるけど自分のインタビューでいいと言ったのはこれが初めての気がする。しかも最近の話)、ネタがいちいち'00年代ならでは。しかも昔のサイト*1を見ていたら、どう見ても榎忠の「半刈りでハンガリーへ行く」そっくりの写真があった*2。このアキバ系オタク趣味全盛にあって、どちらかと言えばハイカルチャーなアート臭が感じられる。というわけでなんとなく気になっている。

EVERYDAY LIFE/ART ENOKI CHU―榎忠作品集

EVERYDAY LIFE/ART ENOKI CHU―榎忠作品集

榎忠「半刈りでハンガリーへ行く」

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マンガとか音楽とかゲームに造詣の深い芸人さんがその趣味を見せるようになったのは、かなりの確率でバッファロー吾郎の功績だと思っている。でもこの中山功太の話からして、同じサブカルなのにバッファロー吾郎〜現在までの短い間にも、少しずつそのカルチャーの変遷がある。しかもそれがネタと関係しているからすごく面白い。


バッファロー吾郎世代(昭和45年以降生まれ、大阪NSC10期前後)がチョイスするのは、昔だと脱線3周りからLBネイション流れの渋谷系だとか元OMS周りから関西小劇団系とか。今でもどこか90年代前半の、それこそ前書いた『i-D JAPAN』とか『花形文化通信』とか『JUNGLE LIFE』の系譜を残している。実際、これは今でもヨーロッパ企画とかデス電所との交流に繋がっているんだろうし、piperみたく吉本が小劇団をマネジメントするようになったのだってこの影響は少なからずあると思う。


それが今30歳前後の芸人さん(昭和50年以降、大阪NSC15期前後)になると、ゲームとかテクノっていう90年代後半に定着したカルチャーの人たちが増える(次長課長井上とか)。あと、この世代で気になるのは、サブカルとも微妙に違う、メジャーとマイナーのカオス感を持ってる人が出てくるということ。個人的にはチュートリアル徳井がそうだと思っていて、昨今のネタにも見られる“モノに対する視点”とか言語チョイスにそのカオス感がものすごく感じられる。これは多分『SNOOZER』読者の感覚に近くて*3サブカル層の視点から見ればライトな感じはする。でもこれが90年代に別れていたサブカルとメジャーの融合への揺り戻しというか、2000年前後に音楽雑誌が作り出したカオスの象徴になっているはずだから、至って(私がこういう括りの人たちを見た時に感じる個人的な感覚からしても)昭和50年組らしいサブカルのとらえ方だと思う。


で、今20代半ばの芸人さん(昭和55年以降、大阪NSC20期前後)になると、さっきの中山功太とか、出てきた時からずっとLBネイションアピールが見えるネゴシックス(出囃子が四街道ネイチャー「惨事」)あたりになる。ただ、今はアキバ系オタクもサブカルの一角を担っていることを考えると、アキバ系オタク天津向と中山功太+ネゴが'00年代サブカル芸人ツートップになると言えるのではないかね。そういえば麒麟川島も『ファミ通』読者投稿欄に載ってたくらいナチュラルなゲーオタだけど、こういう区分で括る時だと彼は30歳代チームの方に限りなく近いのかもしれない。


ガンオタ若井おさむの例とか言い出すととろサーモンヒューマンビートボックスネタとかジャルジャルのラッパーネタとかキリがなくなってくるので、ネタについてはやめておく。

などということを考えたりした。


(補足)
ちなみにこれは吉本に限っての話。松竹とかにはシュールなものを受け入れる土壌があったから、よゐこみたいなスタイルの芸人さんが生まれたはず。今でも吉本の芸人さんがシュールな芸風の人を指して「芸風が松竹」とか言う表現は生きているみたいだし、実際、会社の芸風で言えば吉本は最も基本的なオーソドックスかつベタな物を求める傾向が強い。だからこそ、ネタと自分の趣味に乖離が起こっている人が多くなる傾向があったのだと思う。

*1:NSC出たてくらいの頃、足軽エンペラー(現南海キャンディーズの山ちゃんがやっていたコンビ)とやっていたサイト

*2:まったく関係ないかも。でも榎忠は神戸の芸術家だしKPOでも展覧会をやるくらいだから、どこかで見たという可能性はあると思う

*3:実際、徳井はMONDO GROSSOUNDERWORLDYUKIPOLYSICSとトランスを同列に聴くらしい。しかもマンガは『NANA』(いわゆる現在形メジャー女子マンガのアイコン)。もっと強いサブカル寄りなら男子でも女子マンガは『ハチミツとクローバー』か魚喃キリコ作品を選ぶんじゃないかと思う。これは「麒々麟々」時、「彼氏と彼女」で川島がセリフの中で言ってたマンガのチョイスでも気になったこと(川島の場合はこの『NANA』の対極に『動物のお医者さん』と『働きマン』を持ってきていた)