カタリココー大谷昭子&柴崎友香@百日

吉祥寺の古本屋「百日」のカタリココに行く。
第一のテーマは東京と大阪の違いについて。『その街の今は』のモデルとなったカフェ*1の話や、各作品での場所の捉え方や感覚の違いを語る。「読んでいる時に情景を想像して組み立てながら読むので小説を読むのは遅い」などのエピソードが飛び出して面白い。柴崎さんは約3年ほど前に東京に引っ越してきたということや散歩が好きなこともあり、昭文社の『山手・下町散歩』*2を片手によく歩いているらしい。「東京は大きな木が多い」と何度か仰っていた。作中の風景や情景を表した例として、『ショートカット』から主人公がポラロイドを構えながら新宿御苑の周囲を散策する部分を朗読。
作品最大の特徴である大阪弁など言葉の扱い方、そこから派生して出てきた、宮沢賢治など方言で書かれた作品を音として聞いた時の印象の違いなどの話も興味深かった。書かれた文と音読した際の印象が大きく違うだけでなく、関西弁がよく描かれた例として、谷崎潤一郎『猫と庄造と二人のおんな』から「前妻が現妻に送りつけた手紙」の部分を朗読。
休憩の後、『星のしるし』などを元に、柴崎さんが大学時代から撮影しているという写真と風景の描き方の関係を語る。写真を未だフィルムで撮り続けることの意味や風景を切り取る時の思考が、会話の中から浮かび上がってくる感じ。ここでは風景を子細に表現している文の例として、大竹さんが自身の著書『図鑑少年』から一節を朗読。

トークテーマが柴崎作品におけるポイントとなっている要素ばかりなのでとても興味深かった。表現と照らし合わせるとなるほどなと頷ける項目が多いのはもちろん、作品を書く時はすべてカレンダーに起こったことをスケジュール化してからでないと書けないことや、『星のしるし』は初めて結末を考えずに書いたこと、普段夏休みの宿題のようにぎりぎりにならないと書けないこと、など作品からだけでは知り得ないことがたくさんあったし。終わってからサインをもらったりして、どこのミーハーなのかというくらいひさしぶりに盛り上がってしまった。

百年ーカタリココ http://www.100hyakunen.com/?mode=f3
昭文社『山手・下町散歩』 http://www.mapple.co.jp/publ/shitamachi.html

*1:言及されなかったけど、外装は本町のコンテンツレーベルカフェ

*2:「大きな木や銭湯が目印で散歩好きの心をよく知ってる」と激押し