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グレゴリ青山『ナマの京都』
京都で生まれ育ったイラストレーターさんが京都のいろいろについて描いたイラストエッセイ。京都で生まれても育ってもいないが、草津にはなんとなく京都の文化もうっすら影響を受けているようで笑える部分がたくさんあった。実際に京都の人がお友達に多いというのもあるからかもしれないが。


バイトをしていた料亭での「京都のいけず」心の話、「〜(し)はる」「〜(し)よる」「もっさい」の言葉使い、深泥池(みどろがいけ)と京都国体時のキャラ未来くん(今でも名残のあるところもある)、九条ネギの話など面白いネタがたくさん。個人的にキたのは「もっさい近畿地方のCM」、RCSの映画館の話、西陣友禅会館での「ペラッペラのポリの着物に西陣織のちょう高い帯を合わせる」話。面白すぎ。


「もっさい近畿地方のCM」といえばKBS京都で流れるCM4本。これを読んで腹を抱えて笑う。でも今でもこのCM余裕で流れてるよね。
Q.以下の質問に答えなさい。
1.「いやぁ、ええ好みの着物やこと〜」と言えば?
2.舞妓さんの好きなお菓子と言えば?
3.お墓のない人生はどんな人生?
4.山田木材のかけ声は?


高校時代はRCSのプロデュースしていた映画(いわゆる単館系作品)しか見に行かなかったから、ルネサンスホールとスペースベンゲットの名前が出てきて懐かしかった。ルネサンスでは「サム・サフィ」の記憶が鮮明にあるんだけど、93年になくなったと書いてあってびっくり。もうそんな前だったのか‥‥。
大宮のスペースベンゲットは、ついこの間まで中崎町にあったプラネット+1によく似た「マンションの1室にパイプ椅子」という感じの小さな映画館。ここでは「三月のライオン」の再々上映くらいを見に行ったな。
あと、この本ではまだ東一条の日伊会館の映画館(チャオ! シネマ)のことが書いてあるんだけど、たしかここもなくなったんじゃなかったかな。お昼も惜しんで見に行ったRCSの話は個人的にツボをつかれる懐かしさ。


「着物は帯で見はるから、着物そのものよりも気を使わなあかん」とは、親戚中ではそれほど着物に詳しくない母親からですら言われたことがある言葉。なんとなくそれを知っていたので、この作者さんと編集さんが西陣織会館で着付けてもらった時にぽろりとこぼした言葉と会館のおばちゃんの返答が面白かった。あと伏見稲荷は高校の通学路だったのでたいへん懐かしい。深草のほうに伊藤若冲ゆかりの建物があったなんて‥‥高校時代に知りたかったわ。あんなに毎日通ってたのに!


毎年毎年たくさんの京都関係の本が出ているけれど、これは古くなっても楽しめるいいエッセイだなあと思った。

ナマの京都

ナマの京都

 

● TRUCK FURNITURE『家具をつくる、店をつくる。そんな毎日。 -MAKING TRUCK-』
初めてこのお店を知ったのは、まだ私が学生で雑誌の編集部でバイトをしていた時だったと思う。女性誌だったから、玉造にできた手作り家具屋、という新ショップ情報がかわいらしい写真とともにページに収まっていた。同じ頃にgrafもできて「手作りの店」という特集が組まれていたのもなんとなく覚えている。


この本を読んでいたら、その頃のことが少し書いてあった。そして、知っている場所の写真がたくさん載っていた。私がお昼時間に谷四から自転車で抜け出して、TRUCKの近所にあった「くまごろう」という小さな雑貨カフェに行ったり、仕事終わりの難波宮でピクニックをしていたのも、ちょうどこの記事の頃だった。

この人たちはあの頃に、こんな風に思ってやっていたのだなあと思ったら、ぜんぜん知り合いでもなんでもないのにちょっぴり親近感がわいた。変な話だけども。


すべて自分たちでディレクションをして制作するという彼らにとっては、言ってみればお店も家具もカタログも写真もすべて作品。雰囲気のいいショールームと雰囲気のいいカタログ。買えなくてもそこに行くだけでなんとなく嬉しくて、カタログを眺めているだけでなんとなく嬉しくなる。そういう不思議な雰囲気のあるものを生み出せる人たちなのだろう。でき上がったものはおしゃれでもあるから、素直に感心してしまう。


おしゃれ系のエッセイ本、と言ってしまえばそれで終わりなのだけれども、妙に懐かしく暖かみがある本だなあと思った。まあ、その辺は勝手な個人の思い出でしかないが。

家具をつくる、店をつくる。そんな毎日。 -MAKING TRUCK-

家具をつくる、店をつくる。そんな毎日。 -MAKING TRUCK-